まほろばの島詩

50年ぶりに帰ってきた故郷の風景写真

上新田・追想  =僕は涙を堪えて真っ暗な山道を走った=

上新田の集落には、小さい頃の忘れられない甘苦い想い出がある。
塩屋の桜


子どもの頃、山を二つも越えなければならなかった上新田へは特別なことが無ければ行かなかった。
年に二度程、漁業の盛んだったこの上新田にある親戚の家に行ける日は朝からわくわくしていた。
頭に手ぬぐいを巻き,大きな声で魚介類を荷下ろしする威勢のいい大人たちの姿を見るのが好きだった。
いつだったか・・僕が3,4年生の頃の事だったと思う・・・・・

この漁港で道草をして、帰らなければならない時刻に気付いた時は、日は大きく西に傾いていた。
僕は叱られると思い、親戚の家にも立ち寄らず山道を急いだ。
日が暮れぬうち、暗くならないうちに山を越えなければ・・・僕は一心にそう思いながら走った。
一つ目の峠を越え、二つ目の峠を越える頃、日は、西の島の向こう側に回っていた。
途中、畑帰りのおばあさんが僕を見て何か言っていたが、僕には聞こえなかった。
僕は「うん」とだけ答えて、残照の洩れる山道を走り続けた。
八幡様の浜に出た時、辺りすっかり暮れていた。(5月7日・62番札所のある分岐点です)
ここからは、もう一つ山を回り込まなければ僕の家には帰れない。
この道は、「狐や狸が出て人を騙したり、人をさらったりする」と、大人たちから聞かされてきた道だった。
泣きたいほど怖かったが「お前は男だろ!泣くな!」何度も何度も自分にそう言い聞かせながら歩いた。
灯りを持っていない僕には、月明かりだけが頼りだった。
途中、中新田の集落に着いたが、出会う人はいなかった。そこを過ぎ、
いよいよ大人たちの話していた道に入ると、大きな岩や木が、得体の知れない影となって僕を襲ってきた。
山の奥からは誰かが僕を呼びながら追いかけてくる。呼び声はこだまとなって迫ってきた。
僕は夢中で駆け出し、止まっては又駆け出した。息が苦しく倒れそうになると歩いた。
沈黙の夜道は震え上がるほど怖かった。
「勝ってくるぞと勇ましく~」「我は海の子白波の~」大きな声で威勢のいい歌を歌い続けながら歩いた。
「来るなら、来い!」「出るなら、出てみろ!」「おいら負けないぞ~」
どこで拾ったのか、しっかり握っていた長い棒を振り回し、大声をあげながらそれでも僕は歩いた。
いくつかの角を回った時、突然、海員を養成する学校(現・海洋資料館)の灯りがみえた。
海員学校には大勢の学生さんが寄宿している。、我が家はそこからすぐのところにあった。
僕は、「うわー」と、悲鳴とも雄叫びとも言えないような声を張り上げながら我が家目指して走り出した。
海員学校を走り過ぎ、駐在所の灯りの下で僕を待つ母の姿が見えた時、
それまで堪えに堪えていた涙がどっと溢れ出した。

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そう、芥川龍之介の『トロッコ』の良平と全く同じ思いだった。
僕が初めて『トロッコ』を読んだ時、良平の気持ちが痛いほど分かり、泣いた。中学1年の春だった。
上新田の集落に来ると、今でも僕は、その時の事を思い出す事がある。
今年、僕は、恐怖で震え、涙を堪えながら走った山道を50年ぶりに歩いた。



ここにも、残したいもう一つの風景がある
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
陸に上る船たちも   年々漁船が少なくなる上新田港。 港の後方は志々島、さらに奥は金比羅の連山
上新田漁港2
瓦を重ねた民家の土手も      いつも手入れの行き届いた民家の裏にある土手
海人さん来島 054
家人の嗜好?を積上げたこんな壁も  好きだったんだろうな~。それにしてもこれは見事。空調にも・・・。

海人さん来島 056
歴史を刻んだこの塀も  この家の裏庭もまた美しい。
海人さん来島 053

瓦を埋め込んだこんな土塀も     粟島は北前船と瓦焼きで栄えた島だった。
海人さん来島 052
それぞれに皆趣があって美しい。
これらの風景をいつまでも残したいと思いながら家路に着いた。


今日は、上新田にある「京の浜」の路地から「塩屋」「上新田の港」を紹介しながらお別れしたいと思います。
まるで、NHK『その時歴史は動いた』と同じ語調だね。失礼しました。 では、また。



帰る途中、丘の上から振り返ると、上新田の港が小さく見えた。
赤い灯台が淋しくも見えた。

上新田
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  1. 2009/05/10(日) 20:04:28|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
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コメント

No title

想い出の粟島ロマンの粟島色々見てるよ有難う
取材頑張りましょう---f(^0^)f ファイト!!
p(#^▽`)q ファイトッ
p(^^)qガンバッテ!
p(・∩・)qガンバレ!
  1. 2009/05/10(日) 04:12:37 |
  2. URL |
  3. 鷹野 富士丸 #2u.skda2
  4. [ 編集 ]

No title

本日の巻頭文を読み幼いころの同じ思いがドバーッと湧き上がり、思わず真珠の涙が・・・
私の場合は上新田じゃなく下新田でしたが。
六十路ど真ん中、幼きころの思い出を掘りおこし、今まだ美しい故郷をブログで紹介していける、そのパワー、頑張れ!(おおいにプレッシャーを与えてる。人間ある程度のプレッシャーを感じてないと前進はない、ボケる、・・・んじゃないのかな)
今日の写真のようにまだまだ私たちの知らない、気が付かない粟島をおしえてちょうだい!

  1. 2009/05/10(日) 09:13:07 |
  2. URL |
  3. ふうちゃん #-
  4. [ 編集 ]

No title

鷹野 富士丸さん
応援ありがとうございます。
ぼちぼちと、無理の無いようにいきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふうちゃん
ありがとうございます。
粟島の紹介も、もう少しで一段落。
そうしたら、少し休憩。
こんなペースじゃ畑がおろそかになって
ほったらかしにしてても育つ芋や豆さえも危ない状態。

今更前進?とんでもない。もうとっくに折り返して
ゴール寸前の爺さんに鞭打って、GO!GO!かいな。
そりゃ殺生やで。
  1. 2009/05/10(日) 16:31:05 |
  2. URL |
  3. 北さん #-
  4. [ 編集 ]

No title

Tさんのむすこさん
早速、ありがとうございました。
これからも時々開けてみてください。
近々にTさんも登場すると思います。
コメントに気づかず、返信がおそくなりました。
どの記事に返信すればいいのか・・・
結局今日の場所に。どうもパソコンって奴は・・・。
手の方は大丈夫ですか。失礼しました。
初めてのことで、こちらもびっくりしました。
よく言い聞かせます。・・が、だめなんでしょうね。

  1. 2009/05/10(日) 17:01:34 |
  2. URL |
  3. 北さん #-
  4. [ 編集 ]

追憶の彼方

色付きの文字
北さんの少年時代を育んだ粟島!
少年の足には遠かった道、今では、越すのにご苦労されているでしょうか?
まだまだお若いからそんなことはないですか?!
ファインダーから風景を取り出す度に、少年の頃の思い出を拾い上げられていらっしゃるのですね!
感嘆の日々です。
  1. 2009/05/10(日) 17:38:00 |
  2. URL |
  3. 露山 #-
  4. [ 編集 ]

No title

露山さん
ご訪問頂き、ありがとうございます。
その上、コメントまで頂き恐縮です。

お世話になった方達へ
自分が育った故郷の景色を見て頂こうと始めたブログです。
全く言うことを聞かない(聞かせられないが正解です)パソコンや
多機能過ぎて馴染めない(ただの初心者です)カメラ相手に格闘しながらやっています。

≪故郷は 遠きにありて 思うもの≫なのか
≪ふるさとの山はありがたきかな≫と思うものなのか
そんなこと決め付けるものではないと、双方の思いを抱きながら、
これからのスローライフを楽しんでいこうと思っています。
頭に霜を置く年になりながらも、未だ悟りも開けずにいる爺さんを
時には尋ねて来て下さい。


辛いことや、苦しいことの方が多かった筈なのに
年を経るごとに浄化されていく思い出は
  1. 2009/05/10(日) 21:02:52 |
  2. URL |
  3. 北さん #-
  4. [ 編集 ]

No title

こんな塀があるんですねv-11
4枚目凄いですね!!
不思議な塀もあって楽しそうですね
  1. 2009/05/10(日) 22:02:56 |
  2. URL |
  3. 健司 #-
  4. [ 編集 ]

No title

健司君
普段何気なく通っている道も
よく見ながら通ると面白いものが見えてきます。

あの壁、驚いたでしょう。全部一升瓶でした。
私があれだけ飲んだら、天国へ何回も往復しなければいけないね。
でも几帳面にきちんと積んであってきれいでしたよ。
あのビン、きっと空調の役目もしていると思うよ。
  1. 2009/05/10(日) 22:49:46 |
  2. URL |
  3. 北さん #-
  4. [ 編集 ]

こんばんは~♪

今日も、少し遅くなりました。
午前様にならなくて、良かった~♪
癒されながら、眠りたいので、おじゃましました。
瓦で作られた。。。歴史を物語っていますね~。
ほんと、残したいものですよね。このような貴重な
物は。。。今日も、疲れたのでこれで。。。。
  1. 2009/05/10(日) 23:40:03 |
  2. URL |
  3. ken #-
  4. [ 編集 ]

No title

kenさん
Kenさんにそう言って頂き、又ファイトが沸きました。
でも、能力には限界がありますから、
そこのところはご勘弁を。

毎日お帰りが遅いようですが大丈夫ですか?
睡眠不足は身体に堪えます。
健康第一ですよ。
そんなお疲れのところ、毎日ありがとうございます。

  1. 2009/05/11(月) 20:48:45 |
  2. URL |
  3. 北さん #-
  4. [ 編集 ]

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Author:喜多さん
瀬戸内海と東京湾、二つの故郷を行ったり来たりの根無し草。
瀬戸内の小さな島や三浦半島の風景、生活等を中心に描いています。
又、折々に咲く身近な草花や、旅先で出合った風景等も織り交ぜながら、好き勝手な事を綴っています。

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